思わず写真を撮りたくなる加賀の原風景
大聖寺や橋立をはじめ、いまも加賀市にはどこか歴史の面影を感じさせる景観が残っています。
変わることのない風景は、かえって新しさを感じさせてくれるのかもしれません。
加賀に残された原風景を辿ってみませんか。
鶴仙渓(かくせんけい)
山中の温泉街に沿うように流れる大聖寺川。
風光明媚な鶴仙渓沿いには、約1.3kmの遊歩道があり、趣が異なる3つの橋が架けられています。
美しい渓谷の景色に溶け込む総ひのき造りの「こおろぎ橋」は日本情緒が感じられる木橋。
「鶴仙渓を活ける」というコンセプトのもとデザインされ、どこからでも背景に渓谷が写りこむ、S字型で紅紫色の鉄橋「あやとりはし」。
そして、木々に囲まれアーチ型に架けられた大正ロマン漂うレトロな石橋「黒谷橋」。
春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々にそれぞれの橋を巡りながら北陸随一の渓谷美を誇る鶴仙渓の散策が楽しめます。
また、春から晩秋には「あやとりはし」の側に休憩処「川床」が期間限定でオープンします。
甘味でちょっとおやつ休憩もよし、川床弁当をテイクアウトしてランチもよし。
川のせせらぎを間近に感じながら、心しずかな時間を過ごしませんか。
加佐の岬(かさのみさき)
駐車場から散策路を数分進み、木々の間を通り抜けると大きく視界が開けます。
青い海と白亜の灯台が美しくコントラストを描く加佐ノ岬は、加賀海岸で最も日本海に突き出し、岬の先端から広大な海が見渡せる絶景スポット。
晴れた日はエメラルドグリーンのような穏やかな海を、風が強い荒天には白波が打ち寄せる荒々しい日本海を観ることができます。
夕景のスポットとしても人気で、特に沈む夕日が地平線に映りこんでキラキラと黄金色に輝く海は、感動的な美しさです。
また、日本三大霊山の「白山、立山(御嶽山)、富士山」を地図上に直線で結んだ延長線上に加佐ノ岬と神奈川県の真鶴岬があり、不思議な結びつきが感じられます。
近年はパワースポットとしても人気の加佐ノ岬を散策して、大地のパワーをいただきましょう。
柴山潟(しばやまがた)
片山津温泉のシンボル・柴山潟。晴れた日には、キラキラと湖面が輝き、湖越しに白山連峰を眺めることもできます。
1日13回も噴き上がる日本有数規模の巨大噴水は、高さ70mにもなり湖上に大きな華を咲かせます。
夜には、ライトアップされて幻想的な雰囲気に様変わり。
サイクリングで湖を一周して爽やかな風を感じたり、朝日や夕日、時間ごとに色を変える湖を鑑賞することもできます。
春には、湖畔公園に桜が咲き誇り、夏には、湖上に上がるダイナミックな花火、秋には、涼しい風を感じながら湖畔沿いを散策、冬には、冠雪の白山連峰と越冬のためにやってきた野鳥を見ることができ、季節ごとに異なる景色を見ることができます。
表情を何度も変える柴山潟。湖畔に佇む宿に泊まって、自然が織りなす瞬間をお楽しみください。
山代温泉 古総湯(やましろおんせん こそうゆ)
山代温泉には、「総湯」と呼ばれる共同浴場を中心に、温泉宿や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪(ゆのがわ)」という伝統的な街並みが今も残ります。
街の中心に復元された明治時代の共同浴場「古総湯」は、木造りの外観や内装はもちろん、かけ湯をして湯舟に浸かるだけの入浴方法も再現。
当時の生活に根付いていた入浴文化を実際に体験することができます。
湯上り後、2階の休憩所でのんびりと時間を過ごして癒されてみては。
柳越しに見える伝統的な温泉街の街並みは、「古総湯」を中心に人の賑わいがあり、温かみのある情景です。
夜は、また格別。外に吊るされた提灯にオレンジ色の明かりが灯り、当時にタイムスリップしたかのような雰囲気。
温泉情緒たっぷりの、夜の「古総湯」で記念撮影してみませんか。
山ノ下寺院群(やまのしたじいんぐん)
町並みや文化・芸術など、加賀藩の支藩・大聖寺藩の面影が多く残る城下町大聖寺。
その大聖寺藩の菩提寺である実性院をはじめ、蓮光寺、久法寺、全昌寺、正覚寺、宗寿寺、本光寺、神明宮の7寺院1神社が並ぶ一帯を山ノ下寺院群と呼びます。
藩政時代に外敵から城下町を守るため意図的に寺社を集めたと言われ、今も多く町並みが残ります。
秋には白い萩が咲き誇り「萩寺」とも呼ばれる実性院、見事な五百羅漢像が並び、松尾芭蕉が立ち寄ったことで知られる全昌寺など、周辺を散策しながら寺院めぐりを楽しみませんか。
寺院群の一角には九谷焼専門の美術館、また少し足を延ばすと大聖寺城址(錦城山)や藩邸跡の庭園や長流亭、町屋が建つ古い町並みなど城下町の面影を感じさせてくれます。
どこか懐かしく、ノスタルジックな雰囲気が漂う風景は、まさしく歴史都市・加賀の原風景の一つと言えます。
重要伝統的建造物群保存地区[加賀東谷エリア・加賀橋立エリア]
加賀には、国の重要伝統的建造群保存地区に選定されているエリアが2つあります。
そのひとつが、加賀市東南の山間部に点在する4つの山村集落(荒谷・今立・大土・杉ノ水)と集落を結ぶ河川と旧道からなる東谷エリアです。
昭和前期から30年代頃まで、この集落は林業と炭焼きが主産業でした。
民家の屋根には煙出しが今も残り、煙が排出されていた当時の様子を思い起こさせてくれます。
雪や凍結に強く耐久性が高い赤瓦を屋根に使用しているのは、冬は雪で覆われる加賀だからこその風景。
周辺の山々や田畑の鮮やかな緑に屋根瓦の赤が映え、美しい山村の風景を今も残しています。
もうひとつは、江戸後期から明治中期にかけて運行されていた北前船の船主や船頭が多く住んでいた橋立エリア。
その当時「日本一の富豪村」と呼ばれた橋立には、今も多くの邸宅や蔵、庭園が現存しています。
邸宅の太い柱や梁は漆塗り、屋根には東谷エリアと同じ赤瓦が使用され、凛とした佇まいを醸し出しています。
石垣や石敷など町中で見られる淡い青緑色の石材には、北前船で運ばれてきた笏谷石(しゃくだにいし)を使用し、豪壮な建物とは対照的に集落全体に柔らかい雰囲気を醸し出しています。