菖蒲湯の由来
菖蒲湯とは…
5月頃から花を咲かせるショウブ(菖蒲)の葉や根を入れた風呂のことです。
この時期は、体調を崩しやすい季節の変わり目であることから、(※1)薬効成分を含む菖蒲が用いられました。
また、ショウブの長い葉や根には、独特の芳香があります。
その香気で不浄をはらい、邪気を遠ざけるといわれています。
5月5日(端午の節句)は、「菖蒲の節句」とも呼ばれています。
武家社会では、ショウブは「勝負」や「(※2)尚武」に通じることから、端午の節句に男の子の出生を祝って、家の軒先に吊るしたり、菖蒲湯に入ることが習慣になりました。
現在では、無病息災を願い、老若男女問わず菖蒲湯に入ります。
(※1)腰痛・神経痛を和らげる効果、血行促進や保湿効果などがあります。 |
コラム
「ショウブ」と「ハナショウブ」
菖蒲湯に用いられるショウブは、サトイモ科の仲間です。
花も咲きますが、ガマの穂に似た形状で、黄緑色の花です。
一方ハナショウブはアヤメ科の仲間で、鮮やかな紫色の花を咲かせます。
葉は<長剣状>でショウブに似ていますが、植物学的には全く別の種類です。
(写真はハナショウブ)
加賀温泉郷の「菖蒲湯まつり」
加賀温泉郷 菖蒲湯まつりは、旧暦の「端午の節句」にあたる6月上旬に行われ、加賀市に残る行事の中では、最も古い初夏のまつりです。
まつりの期間中、加賀温泉郷各地では様々な行事があり、公共浴場やほとんどの旅館の大浴場では「菖蒲湯」に入ることができます。
山代温泉
加賀温泉郷の中で、最も盛んに「菖蒲湯まつり」が行われている地域は、山代温泉です。
平安時代後期の僧・明覚によって建てられた「薬王院温泉寺」は、中世の頃に加賀・越前地方における密教の中心道場でした。
その温泉寺に修験者が集まり、厄年にあたる若者の厄払いのために菖蒲を刈って、俵に詰め、無事息災を祈願したのが、まつりの始まりとされています。
菖蒲の詰まった俵を引きずり回して、湯に投げ込み、その湯に浸かって邪気をはらったという勇壮な儀式は、現在でも「入湯式」の一場面として残っています。
ー 入湯式 ー
6月4日19時00分。
加賀 山代温泉の「菖蒲湯まつり」は、柴燈護摩(さいとうごま:野外で行う護摩法要)から始まります。山伏姿の修験者が、境内に設けられた護摩壇の四方を清めた後、火を点け、心願成就の祈りを込めた「護摩木」を、読経と共に投げ入れます。
やがて勢いを増し、その様子を見守る若衆の背丈の倍はあろうかという高さに達する「不動明王の知恵の炎」は、「むさぼり・いかり・おろか」といった心の迷いを清めてゆくといいます。
柴燈護摩の祈祷が終わると、紅白の法被を着た精悍な貌(かお)の若衆が、威勢の良い掛け声と共に、八俵の菖蒲俵を括り付けた「菖蒲みこし」を担いで、境内で揉み合い、修験者が吹く法螺貝の音と高張提灯を先頭に、街へと繰り出します。神輿が温泉街を一巡する内に、菖蒲の詰まった俵は路上でズタズタに揉みくだかれてゆきます。
そして、破れた俵から菖蒲が路上に散乱すると、若衆は、その俵を奪い合い、拍子木を鳴らして「古総湯」の湯壺に投げ込み、我先にと湯に飛び込んでいきます。
片山津温泉
片山津温泉では、「菖蒲たたき」という行事が行われます。加賀片山津温泉の守護寺である愛染寺で祈祷された菖蒲の葉を町民に配り、その葉で人の肩を叩いたりすることで「福」を伝えるといいます。
その後、各旅館・ホテルの大浴場や、「片山津温泉 総湯」が菖蒲湯になります。
山中温泉
11時00分頃、長谷部神社に氏子や町民、旅館関係者などが集まり祈願祭が斎行されます。
「菊の湯」では終日菖蒲湯になり、各旅館の大浴場でも菖蒲湯が行われます。
柿の葉ずし
1583年(天正11年)前田利家の金沢城入城を祝って領民が献上したところ、珍重されたというのが、現在の柿の葉ずしの始まりだといわれています。
柿の葉ずしは加賀地方特有の押し寿司です。酢めしの甘味と魚のうま味に葉の香りがほどよく広がって、深みある上品な味わいになります。
また、渋柿の葉が良いとされ、葉に含まれるタンニンには防腐効果(殺菌効果)、高血圧を抑える効果などがあります。
まつりの時期になるとショウブの香りと共に柿の葉ずしの材料が店頭に並びます。
シメサバ、鮭、桜エビ、針ショウガ、紺のりなど、具材は地域や家庭で異なりますが、菖蒲湯まつりには欠かせない一品となっています。
かの前田又左衛門利家も豪快に頬張り、堪能したであろう「柿の葉ずし」。
領民から受けたもてなしの味は、格別だったのではないだろうか。
菖蒲みこし
山代温泉 菖蒲湯まつりで引き回される、「菖蒲みこし」は、町の若者たちによって作られます。
祈願式をすませると菖蒲を刈り取り、30~40cmの長さに切り揃えて俵に詰め、その「菖蒲俵」を「力綱」といわれる綱で、「台棒」と呼ばれる神輿の土台の上に六俵、下に二俵といった具合にくくり付けます。
約30メートルの「引綱」を取り付けた後、一番上の俵に、菖蒲と蓬(よもぎ)を一束ずつ付けて完成する神輿の総重量は約350kgにもなります。
入湯式の前日。
山代温泉の家々や旅館では、菖蒲、蓬(よもぎ)、松の小枝を刺し連ねた「軒飾り」や「薬王院温泉寺」の紋が入った「赤ちょうちん」を飾って祭りに備える。
菖蒲の匂いがたちこめる中、山代温泉の青年たちは、手慣れた様子で菖蒲を切り、俵へと詰め込んでゆく。
「菖蒲湯まつり」の主役ともいえる「菖蒲みこし」を作る若者たちの表情は、皆一様に晴れやかだ。
「ハナショウブ」を鑑賞できるスポット
加賀市指定の花「ハナショウブ」を観賞できるスポットをご紹介いたします。
加賀海岸のハナショウブ 越前加賀海岸国定公園の加佐の岬から片野海岸方面へしばらく自然遊歩道を進みます。 断崖に群生するノハナショウブを見ることができます。 例年の見ごろ 6月上旬~中旬 場 所:加賀市橋立町 |
あわら北潟湖畔花菖蒲まつり 300種20万株の花菖蒲が、6月上旬からの1か月間その美しさを競います。 まつりの期間中は、特産市や多彩なイベントが催されます。 日 程:6月8日(土曜日)~6月16日(日曜日) 場 所:あわら市北潟211 北潟湖畔花菖蒲園 入場料:無料 お問い合せ先:あわら市観光振興課 (0776-73-8029) |